虹が見えたら
「なぁ、前から聞こうと思ってたんだけど、女の子たちの話じゃ、おまえ虹色寮のオーナーの子になったって。
金持ちそうなのに、バイトさせられてんのか?
もしかして、いじめられてるのか?」
「えっ?ううん。オーナーも、寮のみんなもすごく良くしてくれるの。
ほんとに学費も、食費も、おやつ代も、必要なものみんな用意してくれていい人ばかりよ。
でもね、私それにあまえてばかりいるのが申し訳なくて。
逆に苦しくなっちゃうの。
だから、自力でバイトしようと水商売に行って・・・」
「水商売って・・・それはよくないよ。」
「うん、真樹さんにもそう言われた。
あ、真樹さんってそのオーナーの名前なんだけど、真樹さんの持ってるマンションのお仕事のお手伝いならって許可をもらって。
だから、私のわがままっていうか、やりたいってお願いしてやっているの。
まさか、高倉くんが住んでるとは思わなかったけど。」
「そっか。山田は大人だな。
俺なんかその点、青春を謳歌ばかりしてるかもな。
ずっとサッカー少年だからな。」
学校が近付いたからか、なるみは女の子たちの視線が気になった。
「サッカー少年ってことはないでしょう。
今や注目の的なお方なんだから。
じゃ、私、寄るとこあるから先に行くね。」
「あ、あの・・・山田!
まぁ、また朝会えるか・・・。」
なるみは直接、自分の教室へと駆けこんでいた。
「あぁ~~危ない!
あのままのんびりニコニコと高倉くんといっしょに正門を通ったりしたら・・・って思うと怖い怖い。
高倉くんは確かに硬派で人気あるのがわかるなぁ。
誰かと付き合ってるなんて話も聞かないし・・・ほんとにサッカーが恋人なのかな。」
その日の放課後、なるみは生徒会に所属していて寮長でもある由起子に、生徒会通信の配布準備を手伝ってほしいと頼まれた。
メンバーが3人インフルエンザで欠席しまったからだとか。
いつも寮では姉のように面倒をみてくれる由起子の頼みでは断るわけにはいかない。