虹が見えたら
早起きは・・・
なるみは捻挫が治ると新しいアルバイトを始めた。
補習授業は真樹が学校へ申し入れして減らした分、食堂で真樹と伊織が交代で勉強をみてくれることになった。
しかし、そんなことが他の寮生にばれてしまったら、みんな食堂で勉強してしまうことにもなりかねないので、表向きは伊織の手伝いのアルバイトということにしてあった。
「夜バイトしてることになってるから、早朝バイトってね。
うーーーーーーん!2時間早出ってもっときついかと思ったけど、晴れた日は気持ちいいかも。」
早速、出かけて行ったところはとあるマンションの機械室兼道具室。
マニュアルに従って、上階からホウキで掃き掃除を始める。
汚れの目立つところの拭き掃除、ゴミ置き場の掃除、植え込みへの水やりなど思っていたよりは楽勝な感じがした。
小さめのマンションなので、朝たくさんの人が出入りすることもなく、住民の人の応対も大変ではない所だった。
「さてと、制服に着替えて登校しなきゃ!」
機械室で制服に着替えていると、突然ドンと音がして、
「すみません!掃除のときに僕のユニフォーム落ちてませんでしたか?」
「きゃあーーーーー!!!」
「おわっ!ご、ごめんなさい。」
どこか聞き覚えのある声に、なるみは制服姿でドアの外をのぞいた。
「高倉くん?」
「山田ぁ・・・どうしてこんなところに?」
なるみはさっき掃除をしたときに、拾ったシャツを差し出した。
「高倉くんってこのマンションに住んでいたんだね。
シャツの名前見てびっくりしたんだけど、よそから飛んできたのかと思って。
私は今日から、週2だけ朝のお掃除に来ることになりました。
よろしくね。
それと、捻挫したときはありがとう。
保健室で分かれてから、落ち着いて会うことなかったからお礼いえなくて。」
「ああ、そんなこと気にしなくていいって。
シャツも拾ってもらって俺の方が助かったよ。
でも、足が治ってすぐにまたバイトって大変だな。
あ、今から学校行くんだろ。いっしょに行こうぜ。」