虹が見えたら

卒業して自立すれば、会うこともきっとないだろう。
兄の古き友人としてだけ認識できる。


「もともと住む世界が違うんだもん。
大丈夫、割り切って生きていける・・・はず。」




それから年度が変わり、3年生にとってはすぐに修学旅行と進路相談の話題の日々となった。
大多数の生徒は上の大学進学を希望しており、希望者は他大学や専門学校を志望していた。

なるみはとにかく、卒業とは思っていたが、いざこれからの進路となると、決定打というやりたいことが見つからず焦りが出てきていた。


「だめだぁ・・・行く先を早く決めなきゃ。
真樹さんにあれだけ偉そうに言っておいて、こんなのじゃ・・・。」



なるみは何かやりたいことのヒントをつかみたいと思い、寮の部屋へもどってすぐに町へと出かけていった。



社会人と言われる人は見渡す限り、どこにでもいて、今ほど必死には見たことがなかったけれど、注意深く見ればみんな真剣に自分の仕事をがんばっているものだと感心してしまう。


感心して、大変さに驚いて、冷たいような気がして、あたりが薄暗くなってきた頃にはなるみの足は疲れて公園の端っこで座り込んでしまった。



「何もヒントも得ないまま疲れた・・・。
我ながら情けないなぁ。」



すると、なるみの前にひとりの幼児がやってきた。


「お姉ちゃん、どうしたの?
動けなくなっちゃったの?」



「あ、そう見える?あははは・・・やっぱりそう見えるよね。
ちょっと遠くまで出かけてきてしまって、疲れただけなの。
心配してくれたの?ありがとうね。」



すると、その幼児は後ろを向いて大声で叫んだ。


「疲れちゃったんだってーーーーー!
怪我はしてないよ。せんせぇーーー!」



「せんせぇ?」
< 74 / 170 >

この作品をシェア

pagetop