虹が見えたら
なるみの連絡で男はすぐに医務室に連れて行かれた。
少し心配になったなるみはそっと、医務室をのぞいてみるとさっきの男はずいぶん楽になったような印象になっていた。
「あれ?いいんですか・・・寝てなくて?」
「これから部屋でしっかり寝ます。
先週から仕事が忙しくて、ちょっと無理してしまったんです。
疲労が重なっていて貧血を起こしてしまって。
でも、あなたが居てくださって助かりました。
時間的にあまり人が通らなかったから、足が前に出なくなったときには、もうだめかと思いましたよ。」
「とにかくひどくならなくてよかったです。
それじゃ、私はこれで・・・。」
「あ、あの・・・・・足の速いコだな。
命の恩人なのに、名前を聞きそびれてしまった。」
なるみはあわてて、部屋にもどると2人がムッとした顔で座っていた。
「やけに遅かったんだな。
そんなに温泉がうれしかったのか?」
伊織がいじわるそうに言ってきた。
「違うわよ。ちょっと気分を悪くした人がいたから人助けしたのよ。」
「大変だったね。で、その人は?」
真樹が心配そうに今度は聞いたので、なるみは女湯を出てからのことを話した。
「疲れてるのは我々だけじゃないってことだね。」
「世のオジサンたちってほんとに大変なのね。」
なるみがしみじみとそう言うと、真樹と伊織は苦笑いするしかなかった。
伊織が酒に酔って先に寝てしまうと、真樹はさりげなく自分の布団にもぐりこんだ。
そして、なるみに背中を向けたままつぶやいた。
「修学旅行は緊張しないで行けそう?」