キマイラ



「…………バカじゃないの?」



キマイラさんは本当に馬鹿にしたように言った。

うっ……。
真面目に言われた。



「でも、私はそういう奴嫌いじゃない」



けど、次には微笑んでそう言う。



「自分を殺す相手に家を教えちゃうバカなんてそうそういないし」



は!?
家を教える!?
もしかして、送るとか行ってついてきたのは、俺の家を知るため……!?
俺が他言したらいつでも殺しにいけるように!?
やっぱり冗談でも何でもなくマジだったんだ!!



「じゃあ、戸締まりをしっかりして学生は明日に備えて寝たまえ青年」



キマイラさんはそう言うと、暗い夜道に消えていった。
普通に歩いて去ったのに、それはもう霧のように夜の闇に自然と溶けていった感じだった。





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