流星ラジオ


「…って、死んでること前提になってる!」

独りでそう呟き、彼女はあわてて消しゴムを手に取った。

ゴシゴシゴシ…

便せんに連なる文字をひとつ消すたび、彼との思い出も消えていきそうな気がする。


彼女はゆっくりと首を巡らせ、壁にかけたカレンダーに目をやった。

「もう5年…かぁ」

彼がいなくなってから、5年という月日が流れようとしている。
彼女は彼が戻ってくるのをこの部屋でずっと待っていた。


彼は死んだのではない、消えたのだ。

それは「蒸発」と呼んでもいいほどの現象だった。


彼が消える前に残した置き手紙は、今も小さな箱の中に大事にしまいこまれている。


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