月物語 ~黒き者たちの宴~
―私はあなた。
「えっ?」
どうやら礼の声も聞こえているらしい。
姿を捜すが見あたらない。
最初から見つからないような気もしていた。
声があれば、話はできる。
「姿は見せられないの?
あなたの名前は?」
問いかけながら辺りを見回した。
やはり誰もいない。
―私は、………。あなたの………
声の主は、頭の中だか耳の中だかから聞こえてくる。
とても近いのに聞き辛い。
―あなたは王だと…ことを忘…ないで。
「待って…」
何となく、もう声の主ががいないことはわかった。