月物語 ~黒き者たちの宴~
「本来ならば、このような地に降り立つことはないのですが…
ともかく、もっと安全な場所へご案内いたします。」
礼は、こくりと頷いた。
―本当に、何でこんなところに。
まぁ、肝の据わった娘子で助かったが。
礼が驚かなかったことに不服だった自分を、少し責めた。
暫く森の中を歩いた。
「どうぞこちらへ。
お休みになられる場がございます。
きっと、あの方なら何とかしてくださいます。
だから、あと少しのご辛抱を。」
「ぜんっぜん疲れてないから大丈夫よ。
で、あの方って?」
鰯は一礼すると、その場を離れた。
―無視?
暫くすると戻って来たが、鰯は何かを考え込んでいるようで、それからも何も答えなかった。