月物語 ~黒き者たちの宴~
3章 軽挙妄動 ~王位継承篇~

―1―




『―――大丈夫』



トントントン。



扉を叩く音に礼は目覚めた。



ぼーっと天井を見つめる。



夢を見ていたようだが、何の夢だったのか覚えていない。



次女たちがせっせと礼の夜着を脱がせ始めた。



今日は赤王の即位式が行われるという。



用意された衣装に目をやった。



「綺麗…。」



溜め息混じりに呟いた。



真っ赤な上衣には、朱雀の刺繍が施されていた。



金糸を使った贅沢な品だ。



「よくお似合いですわ。」



次女たちははしゃいでいる。



髪を結い上げられ、冠を乗せられた。



やはり冠も金でできている。



全ての身支度が整うと、次女たちは満足そうに頷き合った。



< 81 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop