月物語 ~黒き者たちの宴~
3章 軽挙妄動 ~王位継承篇~
―1―
『―――大丈夫』
トントントン。
扉を叩く音に礼は目覚めた。
ぼーっと天井を見つめる。
夢を見ていたようだが、何の夢だったのか覚えていない。
次女たちがせっせと礼の夜着を脱がせ始めた。
今日は赤王の即位式が行われるという。
用意された衣装に目をやった。
「綺麗…。」
溜め息混じりに呟いた。
真っ赤な上衣には、朱雀の刺繍が施されていた。
金糸を使った贅沢な品だ。
「よくお似合いですわ。」
次女たちははしゃいでいる。
髪を結い上げられ、冠を乗せられた。
やはり冠も金でできている。
全ての身支度が整うと、次女たちは満足そうに頷き合った。