雨のち晴
体を起こして、シャーペンを持って。
気付けば頭はぼーっとして。
時計には1時半の表示。
やべえ、俺。
頑張った感じ。
自然と携帯を手に取る。
そして、自然とメール。
≪もう限界。でも俺、頑張った方だろ。朱里はまだやってるのか?早く寝ろよ。おやすみ≫
こんなことしてまで、
繋がってたくて。
自分をあざ笑って、寝た。
さっきまで寝てたのに。
ベッドに沈むように、寝た。
何だか心がスッキリしてて。
多分いつも聞けない、
寝る前の朱里の声が。
聞けたからだと思うんだけど。
「終わった~!」
クラスの奴らが騒ぐ。
いや、まだ終わってねえし。
明日もあんだろ。
変なとこ冷静になった俺は、
そんなことを思いながら。
よし、行くかと。
席を立った。
隣のクラスももう終わってて。
中に入った瞬間、
里菜がこっちを見てて
近寄ってくるけど。
もう俺には朱里しか見えてなくて。
あえて言うなら、
中山と石黒は見えていて。
「朱里」
少し大きめの声で名前を呼ぶ。
まるで、里菜に分からせるように。
「あ、ノート…」
「さんきゅ。借りてく」
「あ、でもあたしも寝てて、汚い所とか本当あるから…っ」
朱里はどこまでも謙虚で。
俺はその謙虚さを、
崩してやりたくなる。
「じゃ、ノート借りてく。また返しに来るから」
次の約束。
うん、いい感じ。
俺の中で何か納得がいって。
じゃあなと教室を出た。
里菜も上手くスルーして。
あ、トイレしてーかも。