雨のち晴
そう思って、朱里のノートを
自分の机に置いて、
廊下に出る。
あ~、やべえ。
幸せってやつ?
1人で、にやり笑っていると。
廊下の角で、声がして。
遠くにいる俺は目を細めて。
しりもちついている朱里と、
男の影。
は、誰。
俺は一瞬助けに行こうとして。
そしたら横から、誰かに
引っ張られて。
「十夜っ」
里菜が俺を見ていて。
邪魔すんな。
そういう意味も込めて、
何?と低く唸る。
「今日ね、一緒に帰りたいの」
俺はもう向こうしか捕えてなくて。
だけど話し続ける里菜が、
うるさくて邪魔で。
「あー、はいはい。分かったから黙れ」
「本当!?やったぁ、また後でね」
え、あ、まじか。
俺は自分の適当な返事を恨みながら、
やっぱり向こうが気になって。
あそこにいる男、
3年の、丘谷とかいう先輩?
俺は何話してるか気になって、
気になって。
でも体が動かなくて。
何だ、俺。
ただのチキンじゃん。
惨めで惨めで、情けなくて。
どうすることも出来ない俺は、
見て見ぬふりをして
トイレに行くしかなかった。