雨のち晴
「ありがとうございました」
店員の声を背に店を出る。
食った食った、と
満足そうにお腹を擦る先輩。
「ごちそう様でした」
「いいえいいえ」
寒いはずなのに、
心がぽかぽか。
諒司先輩の存在感って、
大きいなって、
今になって思う。
「着いちゃった…ね」
家の前に到着。
したと同時に、
諒司先輩が。
「あ!」
と、大きな声をあげ。
いきなりあたしの家の
入口の裏を覗き始める。
「どうしたの?」
「へへ。じゃじゃーん!」
諒司先輩は、なぜか
大きな紙袋を取り出して
あたしに手渡した。
「え、何それっ…」
「誕生日プレゼント。気に入るかは分かんないけどさ」
開けていい?と聞くあたしに、
遠慮気味に頷く先輩。
ゆっくり中身を確認すると、
そこには。
「うっわぁ、すごい可愛い!」
ふわふわの毛で包まれた。
大きな大きな、クマのぬいぐるみ。
最近流行っているテディベアの、
なかなか手に入らない
貴重なぬいぐるみ。
「これ、好きなクマさん!」
「でもクマがメインじゃないから」
諒司先輩は、クマに手を伸ばすと、
何やら首元を触りだす。
「お前は毛が多いのが欠点だな」
そう言って、ぬいぐるみに
文句を言う。
あたしは訳が分からず、
じっと見つめる。
「ちょっと目つぶってて」
ぬいぐるみを抱きながら、
言われた通り目をつぶる。
すると、少し首元にひやりと
冷たいものが当たって。
「これがメインだから」
こっちで喜んでくれると
嬉しいんだけど。
そう付け足して、
いいよと言う先輩。
あたしはゆっくり目を開ける。
さっきまでなかった、
首元にシルバーのネックレス。