雨のち晴





お昼の時間をとっくに過ぎていて。


だけどお腹が空いてなくて、


小腹満たしにクレープを食べた。


再びバスに揺られる。


やっぱり、手は繋がっていて。


はしゃぎ疲れたのか、


諒司先輩はあたしの肩で


寝息を立てていた。


一生懸命考えてくれたのかな、とか。


行き方も調べてくれたのかな、とか。


考え出したらキリがなくて。




「ありがと」





寝ている先輩に、


こっそり耳打ち。


夢に出て来るといいなって。


そんなことを思いながら。





「夜どうする?」





「あ、全然まだ時間は大丈夫ですけど…」





「じゃあ好きなもん食わせてやる。何が良い?」




何があるかな、って呟きながら。


あたしの家とは反対の方向に


歩いて行く。





「や、でもお金出してもらってばっかり悪いし」





「気にすんなって!俺、バイト代入ったばっかなんだよ」




「え、バイト?」





言ってなかったっけ?と、


驚いている諒司先輩。


初耳で、驚いてるの


あたしなんですけど。





「俺、裕大の家でバイトしてんだ。あいつの家、居酒屋やっててさ」





居酒屋で働いている諒司先輩、


超お似合いなんですけど。


あたしは心の中で笑ってて。





「だから、お金のことは気にすんな。な?」





「でも…」





「じゃあ、安い所にしよう。それだったらいいだろ?」





諒司先輩って、本当。


温かい人だな。


あたしは思い切り頷いて、


隣で笑う。


行きつけのお店に入って、


メニュー表を見て注文する。


あたしはから揚げ定食、


先輩は生姜焼き定食大盛り。


から揚げ1つと生姜焼き1つ交換。


1度で2度美味しい思いをした夕食。


もう、これだけで満足だった。






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