雨のち晴
さっきボールが当たった所が、
赤くなっていた。
「痛ぁ…」
「見てた」
突然隣で声がして、
肩をびくつかせる。
隣に十夜がいることに、
全然気付かなかった。
「十夜っ、いつから…っ」
「今来た所」
そっか、と。
そう呟いて前を見る。
何か急に十夜のいる左側の
体温が上がってきた気がする。
そういえば、2人になるって
なかなかないな。
なんて考えてると。
「お前って抜けてるよな」
十夜はそう言って、
ペットボトルを手に持つと。
「ドジっていうか、なんていうか」
あたしの赤くなった頬に、
キンキンに冷えたペットボトルを
当ててくれた。
ボールが当たったのは、
あたしの右側の頬。
十夜がいるのはあたしの左側。
つまり今、すごく近距離に
いるってわけで。
あたしは固まって、
動けなくなってしまった。
「1つ聞いていい?」
小さくそう言ったかと思うと。
何だか切なそうに。
「朱里、諒司先輩と仲良かった?」
そう聞いて来た。
あたしは、十夜の口から
諒司先輩の名前が出たことに
少し驚いて。