万華鏡


木陰になったベンチに座ってお弁当を広げた。

彼女のお弁当を見ると、彩りよく綺麗に詰められたおかずに、ご飯の上には桜でんぶやフリカケを使ってお花が描いてある。

「あら、自分で作ったの?随分かわいいのね。」

「やあだぁ。間違えて持ってきちゃったぁ。」

「え…。」

「うちのお兄ちゃんのお嫁さんが作ったお弁当。私のお弁当包みで子供のお弁当包んじゃって…。ダメじゃん。本当にもう何やってんだか…。」

「…へえ。自分で作らないの?」

「んー、ていうか勝手に作っちゃってる感じ?」

「ふーん。お嫁さん、同居してるんだ。」

「うち、両親いないんですよねー。で、七年前にお兄ちゃんが結婚した時から、ずっと一緒なんですぅ。」

「へえ、そうなんだ。」

第一印象はあまり良くなかったけど、彼女も苦労してるんだと思うと、彼女に対する見方が少し変わった。



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