おもちゃのユビワ

確かにナオは高木のことを『憎めない奴』だと言っている。満更でもないという高木の考えも当たらずとも遠からずといったところだ。



秀二は少し不安になった。



「僕さ、ナオちゃんとつき合えるようにがんばろうと思ってるんだけど、ナオちゃんは好きな人がいるみたいなんだ。」



「…」



「キミなんじゃないかって確かめようと思って来たんだけど、どうやら違うみたいだね。」



「え？」



「ナオちゃんがキミのことを好きだとしたら、キミたちは両想いのはずなのに、キミはさっきから不安な顔してる。」



実際高木の言う通りだった。秀二は平静を装っているつもりでも、不安な気持ちを顔で表していた。



「ナオの好きな奴はオレじゃねーよ。残念だったな。」



秀二は立ち去ろうとした。



「待って。」



高木が呼び止めたので振り帰ると、高木は走ってきて秀二の手を取った。



「な、なななんだよっ」



「あーくしゅっ！お互いがんばろうぜ。じゃな。」



高木は走って帰って行った。



(なんだ、あいつ)