おもちゃのユビワ
秀二が廊下に出て歩き出すと、その子は隣に並んで歩き出した。



「藤村君って、秀二って呼ばれてるよね。」



「…」



「私もそう呼んでいいかな。」



(は?何でだよ。初めてしゃべるんですけど?名前も知らないんですけど?)



秀二は心の中で言い返したが、声にはならなかった。



「…」



「私の事も下の名前で呼んでいいよ。」



(下の名前って…上の名前も知らねーよ。)



「…」



秀二は話しかけられているが、ほとんど返事もせずに歩いていた。



「無口なんだねー。」



秀二は何故か知らない女と歩く羽目になっていることに、訳も分からず苛立った。



職員室に着き、プリントを先生に渡すとサッサと一人で教室に戻った。



(あいつ、なんなんだよっ。)



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