失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「亜美は?」
「だから忙しいってこの前言ってただろうが」
陽の何気ない一言に、大翔が厳しく言う。
――やばいなぁ、完璧にあいつがいるのが当たり前になってやがる
「なぁ陽」
「あ?」
読んでいた雑誌から目を離して、大翔の方を見た。
「颯太も、聞け」
「あ?」
窓から外を見ていた颯太にも声をかけた。
「大雅も」
「聞いてるよ」
「ちゃんと聞け」
「へいへい」
マンガから顔を上げようとしなかった大雅も無理矢理向かせる。
「俺がお坊ちゃんなのは知ってるよな?」
その声に、不思議な顔をしながらも、みんなが頷いた。
「言ってないかもしんないけど、前にパーティーで会ったことあるんだよ」
その告白に、陽と大雅と颯太の眉間に皺が寄る。
「亜美が、深瀬がどんだけすごいか、お前ら知ってっか?」
「んなもん、関係ねぇ。亜美は亜美だ」
そう言う陽とそれに頷く颯太。
「それこそんなもん、関係ねぇ、だよ。お前らは分かるか?大人の集団を高校生のガキが堂々と歩き回るすごさが。あらゆる金持ちが一目を置く高校生のすごさが」