失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



車の中ではほとんど話しはしなかった。


あたしはただ、懐かしい町並みを、少し変わってしまった町並みを、見つめていた。




「ただいまぁ」


「おかえり」
「おかえりなさいませ」


聞こえてきたのは瑠伊と代わりの無いお手伝いの面々の声。


あぁ、やっと帰ってきた。



みんなにこうやって言ってもらって初めて、帰ってきたと思える。


一息付いた後、みんなにお土産を渡し、瑠伊といろんな話をした。


佐伯さんはあたしの荷物を持って部屋に運んでくれたみたいだ。


「お父さんは?」


「仕事」


だよな。


まだ日は高い。


こんな時間に社長が家にいたらダメだろ。


「でも早く帰ってくるつもりみたいよ」


「無理しないでいいのに」


あたしが帰ってきたからといって特別な何かを期待したわけではない。


いつもどおりでいいのに。


「久しぶりにみんなでご飯食べるんだとさ」


「そっか」


なら早く帰ってこなくちゃね。



みんなを待たせちゃだめだよ。





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