小鳥と恋愛小説家




「…………なんでカケルが謝るのよ………?」



意味がわからなくてカケルを見上げた。



あたしより数センチ高いカケルの背丈。



いつからあたしによく似た弟はあたしの背を追い抜いたんだろう………。



傍にいすぎて気づかない―――馬鹿な姉。






「…………ずっと、ムカついてた………。

母さんにもカナにも…………ツバサにも。

俺は何なんだろうって……ツバサのお守りをするために生まれてきたのかなって………。

なのに、ツバサは後ろなんて振り返りやしない。

カナがいてくれたら生きられる…そればっかり………。

俺は何のためにツバサを守ってるんだよ………?

だから、小鳥ちゃんにあって………ますますカナが羨ましくなったよ。

いつでもカナをまっすぐに見てる。カナをよくわかってる。

あんな子が傍にいてくれたら………俺は、満たされるんじゃないかって………!


…………利用したんだよ………俺は、病気のツバサを………!」



「…………!!」



初めて聞いた………カケルの本音。



カケルはママにもずっとあたしのことばかり言われてきた……。



あたしが発作を起こせば、どうしてしっかり見ていないの!?…そう怒鳴られていたことを発作に苦しむベッドの中でよく聞いた。



そうよ………。



それなのに……あたしは………自分の想いばかりを大切にして………。



病気の自分だけがかわいそうで…………。



いつもずっと守ってくれた…………弟の背丈が自分を追い越したのはいつかも覚えていない。






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