眠れぬ夜は君のせい
これがいわゆる、記憶喪失…と言うヤツだろうか?

彼女は道で倒れていた理由どころか、自分の名前までもわからない。

「待て、そうパニックになるな」

俺は頭を抱えている彼女の手をつかんだ。

そのとたん、俺はハッと我に返った。

…俺は今、何をしているんだ?

自分で彼女に触れていることに、俺の躰がざわめいた。

ゾッと寒気がしたとか、そう言うものではない。

でも何故か彼女に触れたとたん、俺の躰はざわめいた。

「無理に思い出そうとすると、躰に悪い」

そう言って、俺はつかんでいた彼女の手を離した。

「とりあえず、お前を外に出歩かせることは無理だな」
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