眠れぬ夜は君のせい
記憶喪失で、自分の名前すらわからない彼女。

ましてや、世間では吸血鬼の事件が流行っている。

「お前をここに置いておく。

ただし、置いておくからにはちゃんと働け」

「…はい」

彼女が首を縦に振ってうなずいた。

「いいか、明日からお前は俺の専属メイドとして働け」

俺はたった今言った自分の言葉に耳を疑った。


「困ります、そんなの!」

メイド長が悲鳴のような声をあげた。

「彼女を正宗様の専属として雇わせるなんて、ムチャを言わないでくださいな!」

普段声を荒げることのない谷田部も珍しく声を荒げている。
< 17 / 252 >

この作品をシェア

pagetop