眠れぬ夜は君のせい
戻れないのは、わかっている。

岳がわたしを思っていることはわかっている。

「俺が兄貴に似ているから?

兄貴に似ているから、忘れることができないの?」

その言葉にどう反応していいのかわからない。

岳の気持ちに、どう答えてあげればいいのかわからない。

「俺の顔を見たくないんだったら、目を閉じればいい。

俺の顔なんか見なければいい」

そんなんじゃないの。

言いたくても、唇が動かない。

首を横に振りたくても、動くことができない。

「答えてくれよ、藍子」

「――やっ…!」

荒っぽい手つきで、岳がわたしに触れてきた。
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