眠れぬ夜は君のせい
チラリと、俺はあげはに向かって視線を動かした。

腰までの長い黒髪に隠れた後ろ姿だった。

膝丈の黒いワンピース、フリルのついた白いエプロン、頭にはエプロンと同じくフリルのついたカチューシャが身につけられていた。

我が家に雇っているメイドたちと同じ格好をしているあげはだが、彼女が身につけると何かが違うな。

自分の中で出かかりそうになっているものを隠すように、俺はコクリと紅茶を口に含んだ。

相手はメイドだ。

メイドの姿なんて、飽きるくらいに今まで見てきたはずだろう。

その時だった。

「困ります、章子様!」
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