眠れぬ夜は君のせい
「あきらめた方がいいんじゃないですか?」

その声に視線を向けると、あの日の彼女――篠原瑠香がいた。

「桜介と桜子さんの幸せな笑顔を見ても、まだ考えているんですか?

まだ奪い返してやると思っているんですか?

私、言いましたよね?」

瑠香が僕を見つめる。

「どんなに欲しくても、手に入れることはできない。

無理やり手に入れたとしても、傷つけるだけだって」

頭の中で繰り返される。

――そんなことをしたって、桜介が悲しむだけです

射抜くようなまっすぐな声で、彼女が言う。

――私は桜介の悲しい顔なんか見たくありません
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