眠れぬ夜は君のせい
でも彼はわたしに自分の血を捧げて、わたしを抱いた。

何度もわたしの名前を呼んだ。

何度もわたしに触れた。

唇で、舌で、指で、何度も触れた。

「――正宗様…」

吸血鬼じゃなかったら、よかった。

そうすれば、あなたの気持ちに答えることができるから。

何度もあなたの名前を呼ぶことができるから。

何より、あなたのそばにいることができるから。

人間だったら、どれだけ幸せなことだったのだろう。

そうしたら、この気持ちに悩まないのに。

“好き”、って言えるのに。
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