眠れぬ夜は君のせい
彼女が逃げてしまうような気がしたから。

彼女が遠くへ行ってしまいそうだったから。

だから、跡をつけた。

消えそうになったら、また跡をつける。

……よく、やるもんだな。

そう思いながら、静かに椅子から立ちあがった。

「あげは」

あげはの背中に歩み寄り、耳元にささやく。

「血が、欲しくないか?」

2人だけしかわからない、秘密の言葉を。


「………ッ」

あげはの唇が離れる。
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