眠れぬ夜は君のせい
痺れにも似た甘さの余韻を感じながら、あげはに聞く。

「別に、遠慮しなくてもいいんだぞ?」

唇の端についた血を親指でぬぐいながら、
「遠慮なんかしてないです」

あげはが言葉を返す。

「……俺は、どうなったっていいんだよ」

小さく呟いた声は、あげはの耳に届かない。

俺は、殺されたっていいと思ってる。

あげはに魂を奪われるんだったら、それでいいと。

それで構わないと。

血だけじゃなく、躰も魂も奪われるんだったら、構わないと。
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