渇いた詩
「ハッハッハ!!産みの親は言い過ぎだよ。サク、教えてあげよう」



お父さんが話てくれた真実はこう。



あたしのおじいちゃんは若い頃に久弥のおじいちゃんである海藤 拓郎氏と先輩後輩の関係だった。



あたしのおじいちゃんが先輩で、


久弥のおじいちゃんが後輩。



久弥のおじいちゃんが海藤グループを立ち上げたときに全面的にバックアップしたのがうちのおじいちゃん。


昔気質な海藤グループはうちのおじいちゃんに敬意を表してる人が今も尚たくさんいる。


そんなうちが「事業提携を切る」と言ったら海藤グループのダメージは大きい。


「俺はバンド一本で生きていく。だから、桜とお見合いしたいんだ……。これで文句はないですよね?お父さん」



久弥のお父さんは諦めたようにため息をついた。



「塚原さんのお孫さんなら、文句はない。あとは好きにしなさい」



うそ、本当に……?


「あたし、これからは久弥のそばにいていいの?」


「もう、離さないから。もう一度、俺と恋愛して、桜」



「……はいっ!!!」



あたしはあのときの手放した体温をもう一度、手に入れたんだ。
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