渇いた詩
デパートに入ると何人ものおじさんたちがお出迎えしてきた。


「いらっしゃいませ、海藤様」



その人たちは久弥に深々とお辞儀した。


「社長、ありがとうございます。こちらこそ急なわがまま申し訳ないです」


「いえ、楽しんで行ってくださいね」



社長!?


このデパートの社長!?


なんでそんな人がわざわざ?



「桜、行くよ」


「あっ、うん」



久弥に連れてこられた場所はジュエリーショップ。



「いらっしゃいませ、海藤様」


「こんばんは。指輪、見せてもらえますか?」


指輪?



久弥とあたしの前にはたくさんの指輪が入ったケース。



「桜、どれがいい?」


どれがいいってそんな急に言われても……。



困っているとスタッフのお姉さんがある指輪を紹介してきた。



「こちらはシンプルなデザインのペアリングですので、大変人気ですよ?」


「おっ、桜。これ良くない?」


ウキウキしながら指輪を選ぶ久弥。
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