ありのまま、愛すること。
ここで私は、誤解していただきたくないから、あえて言わなければいけません。

よく、「周囲に反対されるほど恋愛は盛り上がる」と言われますが、母の性格からすると、そういう類の理由で燃え上がったのでは決してなかろうということ。

一本気な母は、自分の強い意志で社長─何度もこう書いていますが、私の父親になる人です─との恋愛をつづけ、姉を胎内に宿したのでしょう。

そして、家族の同意を得られないまま、妊娠5カ月のときに、強引に結婚式を強行したのです。

母24歳、14歳年上の父との結婚でした。

チエ子さんは、その結婚をこう振り返ってくれました。

「渡邉さんはすごく真摯で、素敵で、ハンサムな人。年齢もひとまわり以上上で、人生経験も豊富です。そんな彼が、みっちゃんという美しく優秀な秘書を公私ともにパートナーにしたいと思うのは、当然だったでしょう。後にお姉さんとあなたを産んで立派に育て上げたことも考えれば、やっぱり社長の目に狂いはなかったと思う」

大反対をしていた家族も、結婚後はまた、ふつう通りに母に接するようになったのだそうです。

姉が生まれ、母の母親─つまり私の祖母─からすれば「孫の顔を見た」時点で、許す以外になかったのでしょう。
< 32 / 215 >

この作品をシェア

pagetop