山荒の鳴く夜
「ふざけるなっ!」

椿は激昂する。

彼女は同じ長州派の同胞を守る為に刀を振るっているのだ。

決して見境無しに斬っている訳では…。

「人殺しに綺麗も汚ねぇもあるかよ」

肩越しに椿を見るシイ。

その顔に、邪な笑みが浮かんだ。

これまでの薄笑みとは明らかに違う。

底の見えぬ井戸を覗き込んだ時のような、言い知れぬ悪寒が椿を襲った。

「五人も十人も人の命を奪った…てめぇも俺と変わらねぇ…鬼で、修羅で、獣だ…」

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