山荒の鳴く夜
そんなおどろおどろしい事を考えていたせいか。

「っ…誰だ!」

背後で微かに砂利を踏み締める音がして、椿は過剰に反応してしまった。

神経が張り詰めていたせいで、必要以上に大きな声で威嚇してしまう。

…確かに誰かいる。

闇に乗じて椿の背後に接近しようとした誰かが。

「……」

愛染虎壱を鍔元一寸ばかり抜く。

チキッ、と微かに刀の音。

その音だけで、闇に潜んでいる相手に対する威嚇になる。

『出てこなければこちらから仕掛ける』

そういう意思表示だった。

その威嚇に恐れ戦いたのかどうかは定かではないが。

「涼しい顔して気が短い…そういうとこは沖田そっくりだぜ…」

闇の中から一人の男が姿を現した。

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