午睡は香を纏いて
一見して、女の子たちが目の色を変えて取り巻いていた理由が分かった。

しかし、あたしが思わず見惚れてしまったのは、彼の持つ瞳だった。

それは金としか形容できない色だった。

こんな色を持つ人がいるの?
カラコン? いや、この瞳の光は人工的じゃない。


それに、この雰囲気は、何だろう? 今までに接したことのない空気を纏っているような。


「……見つけた!」

「え?」


顔をまじまじと見つめていると、男は満面の笑みを浮かべて言った。
うわ、かわいい笑顔、と思った次の瞬間、あたしは彼に抱きしめられていた。


「見つけた! いた! サラ!!」

「はあ!? あ、あの、え、誰ですかっ」

「レジィ! レジェスだよ!」


腕にこめられた力は強くて、息をするのも苦しい。
声音は本当に嬉しそうで、喜んでいるのが伝わるのだけれど、だけどあたしは彼を知らない。
誰? 誰なの?


「ちょっと、あの」

「ずっと探してた! よかった、またサラに会えた」

「サ、サラ? あの! あたし、サラって人じゃないですっ! と、とにかく放してください」


どうなっているのか分からないけど、この人はあたしを『サラ』って人と勘違いしているらしい。
息も絶え絶えに言うと、ようやく腕を解いてくれた。
それでもあたしの肩をしっかと掴んで、顔を覗き込むようにして寄せてきた。


「驚いてる? サラ」


はい。ものすごく驚いています。
それに加えて、顔が近い。
いやホント、ものすごく近いんですけど。


動揺しつつも、間近で見て気が付いた。
この金の瞳は、やっぱり本物だ。
初めてこんな色を持つ人を見たけど、なんて綺麗なんだろう。
見ていると引き込まれそうなくらいだ。

って、見惚れている場合じゃない。



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