午睡は香を纏いて
「腕のよい調合師を知ってます。こちらの部屋に出てこれますか。
どういう風に悪いのか教えてもらえると助かりますが」


無愛想な口調だけど、気を使ってくれているのが伝わった。


「出すぎたことだったら、申し訳ないんですが、その、ユーマさま」

「あ、あの。ちょっと、待ってください」


ベッドから降りて、隣へのドアを開けた。
眉間に少しシワを寄せたシルさんが立っていた。


「顔色が悪い。胸は苦しいですか? 食事は消化のよいものに換えますか」

「い、いえ、そんなわざわざ結構です。気を使わせてすみません」


ぺこ、と頭を下げる。と、シルさんがあたしの顔をまじまじと眺めていることに気が付いた。
具合をみるような目つきではない、値踏みするような、ひんやりした眼差し。


「あ、あの……?」


は、として、曖昧に笑う。


「いえ。あの、そちらに食事をご用意しております。どうぞ」

「あ、すみません」


あたしの勘違いだったのかな。
では、と言い置いて、部屋を出て行こうとするシルさんの背中を見つめた。

と、ドアノブに手をかけて、「ああ、そうだ」と思い出したように声をあげた。

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