午睡は香を纏いて
ライラたちに見送られて、一日が過ぎた。

ヤシムスというその土地を抜けると、広がっていたのは地平線が見えそうな位広い、平原だった。
パルルカ平原という名のそこは、国の穀倉地帯であり、
この先に目指すオルガ山脈があるのだという。

その平原は広大なものらしく、今までほとんど寝ずに馬を駆っていたというのに、
まだ三分の一も過ぎていないそうだ。


寝ずに、というのはレジィと馬のことで、あたしは激しく揺れている馬上で、
たまにうつらうつらとしていた。
人間の適応能力というのは恐ろしい。
どんな場所であっても脳は睡眠態勢に入れるようだ。


しかし、こんな強行移動をしても、目指すオルガ山脈まではあと三日はかかるらしい。
女子高生の平均体力しか持ち合わせていないあたしとしては、
途中でどうにかなってしまわないか、心配なところだったりするのだけど。
しかしレジィに比べたら格段に楽なのだから、そんな甘えたことを言っていられない。


彼はあたしを守る為に無理をしてくれているのだ。
事情はよくわからないままだし、この人があたしを連れてきたせいで、
こんな事態に巻き込まれてるんじゃないの? と思わなくもないけど。


その辺りは後できちんと話してもらわないと困る。


でも、差し当たっては、地面で寝られる、ってことが一番重要だったりする。
揺れない場所で横になれるって、幸せだ。

当たり前のことにささやかな喜びを感じながら、あたしは再び周囲に視線をさ迷わせた。
何も変化がないことにほっとして、再び揺れる葦毛に目線を戻した。



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