午睡は香を纏いて
「これでよかったかい?」


出て行っていたフーダさんが戻ってきた。
手に、ふんわりとした薄いピンク色のぺティコートを持っている。


「ああ、それそれ。カサネ、これ着て」

「あ、はい」


言われるままに、フーダさんから受け取る。
手にしてみれば、細やかな透かし模様が入っていた。
これも高そうなんだけど、本当にいいんだろうか。


「ほら、早く着て」


セルファさんに促されて躊躇いながらも着ると、コサージュのついたドレスがふんわりと膨らんだ。
裾からは淡いピンクが見える。


「うん、まあまあだね」

「わ、かわいい……」


けど、こんな服装、果たしてあたしに似合っているのだろうか。ピンクなんて着たことなかったんだけど。


「似合ってるよ、カサネ。さっきよりぐんとよくなってる」

「ほんとですか? フーダさん」

「じゃあ次はこっち。座って」


くるくる回って、ピンクと白が揺れるのを見ていると、セルファさんがあたしの手を引いた。
手近にあった桶を椅子代わりにして座らされる。


「あの?」

「化粧。少しいじらせて」


がし、と両手で顔を挟まれて、色々な角度に向けられる。


「肌は、よし。睫毛はちょっと短い。唇は荒れてる」


ぶつぶつと呟いて、セルファさんは持ってきた箱の中から小箱を取り出した。


「あの、化粧するんですか?」

「うん。ここからはただの趣味だけど」

「はあ」



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