午睡は香を纏いて
直立しているあたしに、セルファさんがふん、と鼻を鳴らした。


「そんなに緊張しなくても、傷つけたりしないって。しっかしまあ、転生ってのは面白い。あのサラが、ねえ」

「や、やっぱり劣化してますか?」

「劣化?」


セルファさんがあたしを見上げたのが分かって、視線を下ろした。
眦(まなじり)の花が鮮やかだ。その花芯の青い瞳がじい、とあたしを見つめている。


「え、ええと?」

「劣化とは、違うよね。だって身体はサラとは違う、別人だし。
それに、女としてサラのほうが土台がよかったのは間違いないけど、だからってカサネの土台が悪いとは言ってない」


誉めているのかいないのか。とりあえずは、あたしの容姿はそんなに酷くない、ということでいいのだろうか。


「誉めてるつもりだけど」


言葉の意図を量りかねていると、簡潔な答えをくれた。


「あ、ありがとうございます」

「うん」


鋏から針に持ち替えたセルファさんにお礼を言った。
しかし、セルファさん、運針早っ。
流れるように布を渡る針。家庭科の苦手なあたしには信じられないスピードだ。

セルファさんは切った布で花のコサージュを作り、膝下の長さになったドレスの裾に縫い付けていった。
余った胸元もドレープを残しながら絞り、コサージュで留めた。



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