紅蒼ノ魔女(仮)
そう言うと、サイリはふっと笑みをこぼした。


レア物だ。



「何故笑うのかな?」


「悪い。

ただ、なんと言ったらいいか…

そんな人は今までいなかったからな。」



そっか。


サイリはリーシィのことを心配していたんだ。


きっと姫という立場のせいで素直に本音を話すことができる友人がいないことを。


僕は僕の考えを曲げないでいるだけなのに、こんなことで喜んでくれる人がいる。


それが僕は少しだけ、嬉しいと感じた。


…多分。


もしかしたらサイリも嬉しいと感じているのかもしれない。



「…俺は?」


「え?」


「俺のことはどう思っている?」



サイリのことは…


考えてみるけどみつからない。


あまり関わったこともなかったし。


あっ、でも。



「魔女を否定しない、そこは僕と同じ考えを持つ人、かな。」


「…………」



あれ?


黙ってしまった。


無言の反応はどうしていいのかわからないんだけどな。



「お前は、魔女をどう思っているんだ?」



話し出したと思ったらまた質問。


別にいいけどねー。



「この世に生きる者。」


「つまり、人間と一緒だと言いたいのか?」


「そうだよ。

人間と一緒。」



生きていることだけはね。



「…前にもきいたけど、サイリは本当にいいのかな?

このままシュリアと結婚しても。」


「俺は…」


「もちろんわかってるよ。

君は王子だからね。

でもシュリアは魔女を嫌っている。

否定し過ぎている。」



言い返すことができないのか、それともしないのか。


無表情で口を閉ざす。



「まぁ僕にはやっぱり関係のないことなんだけどね。

…魔女と人間の関係にはまだ隠されていることが多すぎる。

僕は今それを調べているんだ。」



少しだけ目を見開いたサイリ。



「僕にはやらなくてはならないことがあってね。

教えられる範囲で君にも真実を話したい。」



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