双子月
(光弘の様子がおかしくなったのは、林先生と鏡の迷路から出てきてからだわ)


朋香と違って、状況を冷静に把握していた美穂は気付いていた。



団子屋で一息付いてから、次はどこを回りたいか、美穂は朋香に聞いた。


朋香は既に学祭気分ではなくなっていたが、こうして美穂が気遣ってくれているのは分かっていたし、せっかく林先生も来てくれている。


こういうイベントは真朝に劣らず、朋香も好きだ。


皆がそれを知っているから、ちょっと無理して笑いながらお化け屋敷を選んだ。

次のペアはもちろん、光弘と朋香・美穂と林先生だった。



ここもアリーナの2Fを使っているので、さっきの鏡の迷路と同じ位、規模はでかい。



ただ、さっきと違うのは。

一面、自分だらけで自分という人の波に飲み込まれそうになった鏡の迷路。

自分しか見えなかった。



今度は真っ暗で、相手が見えない。

光弘が見えない。



闇に目が慣れてくればくる程、おかしな事に、自分さえ見えなくなる。



嫌というほど自分を多角的に見せ付けられたのに、今度はたった1人しかいない自分を0にされそうな暗闇。



私が存在しているのはドコ?

私はたくさんいるの?

私は独りなの?

私はいないの?





皆はさっきの空間も、この空間も、何も感じないのだろうか。

朋香にとっては映研が作ったCGのお化けなんかより、この何とも言えない感じの方がよっぽど怖かった。





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