双子月

3…アナタ依存 アナタ中毒

「で、お化け屋敷の後は、僕は先に帰らせてもらってまだ聞いてなかったんだけど、その時は光弘君と話は出来たのかい?」


林先生の質問に、朋香は診察中だった事を思い出した。


「実は緊張のあまり、1人でどうでもイイコトばっかり喋っちゃったんです…。
私、美術サークルだから、CGのお化けの絵とかにも気が行っちゃって。
肝心なコトは何にも聞けなかった。
きっと聞いても答えてくれなかっただろうけど…。
私、何かしたのかな…」


涙ぐんできた朋香を落ち着かせようと、林先生はなだめるように言った。


「光弘君も、とても繊細な子だからね…。
きっと何か想うところがあったんじゃないかな?」


と、林先生が光弘について語った時、朋香はふと思い出した。


鏡の迷路に入る前に、この2人はどんな話をするのだろうかと疑問に思い、後でどっちかに聞けばイイやと思った事を。


「先生、あの時、光弘…
何か言ってましたか?」


朋香は軽く首を傾げながら尋ねた。



カルテに何かを書き込みながら、

「いや、特には何も?
美穂ちゃんも光弘君も、朋香ちゃんの事をとても大切に想っているのが伝わってきたよ。」

と林先生は答えた。


「そういえば、冬休みはいつから?」


「うちは学祭が終わったらすぐ冬休みなんです。
だから、もう月曜から冬休みは始まってます。」

「じゃあ、光弘君や、美穂ちゃん達とは?
このキツい時に皆に逢えないのは辛いでしょう?」


と林先生は朋香の方に向き直って言った。


「光弘は基本的にファミレスのバイトでいつも忙しいから…。
でも、やっぱり今までの逢えない寂しさとは違う。
逢えない寂しさじゃなくて、避けられている不安かもしれない。
このまま光弘が私から離れていったらどうしようって、ソレばかり考えちゃって…。

光弘と別れるコトは、死ぬコトと同じかもしれない。
私、光弘がいないと何も出来なくなってしまう。
独りじゃ息の仕方も忘れてしまうくらい…。

光弘に依存してる…
光弘中毒なの…

もしかしたら、この重たい気持ちが光弘を呆れさせて、ウンザリさせてるのかなって考えるコトもあって、どうしたらイイのか分かんないんです…。
病気のコトだって、お互い言いたくても聞きたくても、何故か1歩踏み出せない。
光弘はもどかしい気持ちでいっぱいなんじゃないかと想う。
なのに私は、病気の苦しさと寂しさを和らげたくて、都合良く光弘の傍にいるだけじゃないかって。
光弘は病気のコト、私の口からちゃんと聞いたコトないから分かるワケないのに…」


朋香はまとまりのない本音をツラツラと語った。




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