双子月
そう、学園祭の時、朋香と光弘が先にお化け屋敷に入った時から、自分達が後からゴールした時点まで、美穂と智也は2人きりだった。


もちろん先に口を開いたのは美穂だった。

「林先生、雫とはどういう関係なんですか?
雫は口を開けば、何かと貴方の事ばかり。」

「雫は僕の大事な患者さんの1人だよ?」


「じゃあ、朋香は?
朋香は貴方の事はほとんど話さないわ。」

「もちろん朋香ちゃんだって。
でも朋香ちゃんには光弘君がいるだろう?
さっきちょっとだけ話したけど…
優しすぎるくらい、良い子だね。
だけど雫には僕しかいないから。」


智也は暗がりの道の中をスタスタと歩いて行く。


「雫には私だっているわ!
貴方よりも私の方が雫を大切に想ってる!」

誰もこんな風に叫ぶ美穂を知らないだろう。


「そうだね、だから『雫をよろしく』ね?
美穂ちゃん?」


気付いたらもう出口だった。

2人共お化けなんか目に入っていなかったが、出口のドアを開けた瞬間、蛍光灯の眩しさに目を眩ませた。




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