Blood smell 2
ダンの整った薄い唇が
弧を描くと
口角が耳元近くまで吊りあがり
牙が覗いた


その瞬間
心臓がキュウっと締めあがる


頭の中では
生命の警告信号が流れた


「…殺されるの…?」


必死で振り絞った言葉は
思ったよりも小さくて
酷くかすれていた


「それよりも…もっと
楽しい事が待ってるかもしれないぞ?」


ツクツクと笑う楽しそうなダン

それとは対照的に
私の体温は急速に奪われていく


死よりも楽しい事…?


いや、楽しい事って言うのは
きっと…私にとっては苦しい事…


座り込み絶望に襲われる私の頭上から
冷たい声が降る


「さあ、時間だ。
立て。

陛下と教皇がお待ちだ。」



「…え?」
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