暇潰し物語
涙の卒業
卒業式、それは学生生活の集大成。友達や先生に別れをし、その別れを惜しみながらも、旅立ちに涙を流し祝うお祭り。

そう、今僕は卒業生として、在校生や卒業生の保護者で、賑わっている体育館の真ん中を、列を成して歩いている。

保護者は、我が子の晴れ姿をカメラやらビデオカメラやらで撮るために必死で身を乗りだし、在校生は、部活の先輩やら憧れの先輩やらの名前を叫ぶ。

こんなに祝ってくれる人が体育館いっぱいにいるのに、何とも言えない感動的な一瞬なのに、僕を祝ってくれる人は誰一人としていない。

確実にいないと言える。

親はいないし、後輩に知り合いなんていない、先生に至っては見てみぬふりをしている。

多分、僕の周りの生徒だけ人独り分離れて歩いているからだろう。

いわゆるイジメである。

卒業式だと言うのに、ばい菌扱いされている僕を先生はまるでみない。

先生も人間なのだからイジメられている僕の事が面倒なのも分かる。

だから僕も先生には期待しないし、救いを求めない。

そもそも僕は、イジメの鎮圧は先生だけの仕事じゃないと思っている。

社会、学校、親、生徒、そして僕の全部が問題だ。

それなのに、テレビに出てくる良く分からない評論家や親が学校の先生が悪いのだと叩く。

これは学校の先生へのイジメではないのか?

人のせいにして、自分は何もしていないのでわ?

そうこう考えている内に卒業生の座るパイプ椅子に着席、座った途端に僕の両隣の生徒が、僕から離れようとガタガタとパイプ椅子をずらす、後ろから軽くパンチを背中に受ける。

なにやら周りがクスクス笑っているが僕はもう気にしない。

ずっとイジメられてきたから慣れっこになった。

卒業式は進み、卒業証書授与式が始まる。

卒業生の何人かは感動か何かで泣き始めているが、僕は今まで悔しくて君たちの何倍も泣いてきた。

泣き過ぎて泣き方を忘れる位に。

そして、自分の番が回って来て、担任の先生が僕の名前を呼ぶ。

「斎藤 玉(たま)。」

クスクス笑う卒業生達と、ザワザワする在校生達や保護者達を後目に、僕は立ち上がり卒業証書を取りに向かう。

このセンスのない猫のような名前のお陰で小中高とイジメられてきた。

数々のあだ名を付けられ、数々の根も葉もない噂が流れ、何もしていないのにイジメられる始末だった。
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