暇潰し物語
ゆっくりゆっくりと、寝室の方に向かうと寝室の襖が、少しだけ開いているのが分かる。

僕はようやく寝室の前にたどり着き、襖に手を掛けながら、少しだけ開いている隙間から、のぞき込んでみた。

そこには、横になりながら、真っ青な顔で、目と口を大きく開き、こちらを見ているお婆ちゃんの顔だけが見えた。

玉「…あ…ああ…」。

声が上手くでない!全身は今にも音を立てそうなくらい震え、襖に掛けていた手が脇息に汗ばんでいくのを感じた。

早く助けなくちゃ!すすり泣く声は、寝室の中から聞こえる。

震える足を片方の手で抑えつけ、襖に掛けていた方の手に力を入れる。

ギュッと目を瞑り、大きく息を吐き、襖を勢い良く開けると同時に目を見開いた。

横たわるお婆ちゃんのそばに、頭を抱えながらうずくまる、お爺ちゃんがいた。

お爺ちゃんの腕には所々引っかかれた傷があり、手や手首の傷は酷く、沢山の血が出ていた。

僕は急に力が抜けて、ひざまずいた。

頭の中が真っ白になり、しばらくの間、床の一点だけを見続けた。

5分くらい経った後、僕は何かに操られるかの様に、立ち上がり、お爺ちゃんには何も言葉をかけずに警察に電話をかけた。

その後の事はあまり覚えていない。

警官の話では、お爺ちゃんが、お婆ちゃんの首を絞めて殺してしまったらしい。

ボケてしまっているお爺ちゃんは罪に問われる事はないが、普通に暮らす事はできず、良く分からない施設に送られるらしく、お婆ちゃんの遺体はお婆ちゃんの弟が引き取るらしい。

僕は気がついたら、家の近くの川の土手に座って川の流れを眺めていた。

風は強く吹き、少し肌寒い。

背中「バサッ…バサッ!」

背中から変な音がする。

背中に手を伸ばし探ってみると、何やら紙が貼られている。

取ってみると、そこにはタマキンと書かれ紙が貼ってあった。

学校からずっと貼られていたみたいだ。

その紙を見ていたら、無性に腹が立ち、くしゃくしゃに丸め、川に思いっきりぶん投げた。

しばらく、川を流れる丸めた紙を目で追った。

すると、目の前が段々歪んできて、ぼやけた。

玉「あれ…」

僕は久し振りに泣いていた。
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