きみのうた
「佐々野が言ってたのは、全部事実だよ」
「えっ?」
聞かれてたの・・・?
「全部聞いてたわ、最初から。はぁー。ホントウケるよな」
ベンチに深く沈み込む倉井君。
「ウケる・・・?」
「昨日、お前と教室でバイバイしたじゃん?あの後、彼女と帰ったんだわ。でも、彼女の家の前で急に別れたいって言われた。女って勝手だよな?他に好きな奴できたって。しかもそいつに告られてOKしたって言い出して」
倉井君は蒼い空を見上げる。
「仕方なく別れたよ。まあ?冷めてたし、俺ら。だから一緒に帰りたいって言った時、ちょっとは気付いた。別れたいって言うんだろうなってさ。男ってホンット不利な立場。引き下がるしか出来ねえもん」
「・・倉井君は、先輩が好きだった・・・?」
「・・好きだった」
綺麗な目が、本当にそう言ってるように見えたら切なくなった。
「昨日、お前と一緒に松下で降りたじゃん?でも俺、本当はもう1個先の駅でさ。ただ誰かと居たくて。そしたら泣かないで済むかなって。まあ・・ちょっとは楽になれたんだけど」
だから寂しそうな目をしたんだ・・・。
「ありがとな、笹野」
あたしを見る目は、綺麗な・・透き通った綺麗な色で悲しくなった。
「ちょっ!笹野!?」
耐えれず、涙が流れてきた。
「なんで泣くんだよ!?おい!」
戸惑う倉井君。
「倉井君・・本当に先輩が好きなんだね・・。倉井君の顔が・・すごい泣いてる・・。あたしねっ・・そういう人を見ると泣けちゃって・・・」
たしかに失恋したって意味もこもってるけど、倉井君の気持ちが痛いほど分かる。