夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「なーんだ。食ってねえのかよ……おおっ!」


突然、ばかでかい声を出して、キャベツを刻む女子の輪の中に健吾がずいっと割り込んできた。


「どけよ! 邪魔なんだよ、健吾」


結衣にど突かれても、


「はっ倒すぞ!」


明里に尻で押されても、


「おおおー」


健吾はその様子に魅せられ、動じる様子は微塵もない。


ボウルをシャカシャカかき混ぜながら、目を輝かせている。


トントントントン……


一糸乱れぬ、リズミカルな刃音。


「すげ、料理人みてえだな」


と健吾は身を乗り出した。


「健吾くん」


彼女はにっこり微笑んだ。


「すげーよ、あっこ」


確かに、健吾の言う通り素晴らしい。


キャベツの千切りとは、こういうものを言うのだ。


あたしのぶつ切りとは北極と南極だ。


「えっ、私?」


まるで、とんかつ屋のキャベツみたいだ。


細くて繊細で、瑞々しくて。


あっこは勉強だけじゃなくて、料理もできるのか。


「おれの母ちゃんよかよっぽどうまいぞ」


すげーよ、あっこ、と健吾が誉めると、


「そんなことないと思うけど」


あっこが頬を赤らめる。


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