夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「チョコ、食べた?」


「んにゃ。まだ食ってない」


「え、何でや」


不意に補欠と目が合って、ドキッとした。


「もったいなくて、食えん」


補欠の肩越しに広がる青空。


補欠は本当に青空が良く似合う。


「もったいないって……せっかく買ったのに」


それこそもったいないだろ、と補欠は小さく笑って、また小銭を数え始めた。


「だからだよ」


わざと補欠に聞こえないように、小さく小さく呟いた。


せっかく補欠が買ってくれたから、だから、食べられないんだよ。


もったいなくて、食べられない。


小銭を数える補欠の横顔を見つめて、あたしはひとりでドキドキしていた。


あたしと補欠だけのこじんまりとした空間は、完全に補欠色に染まっていて、優しい風に吹かれていた。


このまま化石になってもいいかもしれない。


補欠の隣に居れるなら、このまま。


パイプ椅子に深く座って、あたしは左手を青空にかざした。


なんて、青い空。


ネイルに散りばめた、ピンク色の小花。


まるで、青空に咲いているみたいだ。


このあとの自由時間、補欠と一緒に校内を回れないだろうか。


勇気、出してみようかな。


あたしは補欠の横顔に声をかけた。


「ねえ、ほけ」


その声は、鳴り響いたチャイムにかき消されてしまった。


ひゅうっと秋の風が吹いて、あたしの髪の毛をなびかせる。


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