夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「よう。夏井と岩渕はお好み焼き屋か」


「あ」


顔を上げた補欠の目が、スペシウム光線を出す。


とても嬉しそうに、補欠は笑った。


「相澤先輩!」


その笑顔は無防備で、今すぐかっさらってやりたくなった。


「売り上げに貢献する先輩に感謝しろよ。ミックスひとつ」


店先に現れたのは、補欠が憧れてやまないという、相澤隼人(あいざわ はやと)先輩だった。


昨年、この南高野球部を初の甲子園に導いた人間だ。


補欠と同じ左投手で、どの角度から見ても爽やかイケメンだ。


「やっほ、夏井くん」


相澤先輩にぴったり寄り添っているのは、彼女の若奈(わかな)ちゃんだ。


これがまた美人で、強烈にお似合いの学校中でも有名な美男美女カップルだ。


あたしに気付いた相澤先輩が、


「よっ」


と左手を上げて、ペパーミントのように爽快に微笑んだ。


彼と仲良くなったキッカケは、先月の球技大会だ。


南高を甲子園に導いた天才肌のピッチャーから、あたしは奇跡の一打を奪った。


完璧に、完全なるまぐれだったのだが。


しかし、あたしは確かにこの男から一打を奪った。


「翠ちゃん、やっほー」


それ以来、彼女である若菜ちゃんもあたしに声をかけてくれるようになった。


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