夏の空を仰ぐ花
ギャハハと笑い飛ばすふたりをキッと睨んで、同時に頭を叩いてやった。


「補欠のこと悪く言ったら、殴るぞ!」


「痛ってえー! 殴ってから言うなよ!」


痛ってえなあ! 、と大袈裟に叫んで結衣が走り出す。


「待てーい! 逃がすかあー!」


追い掛けようとした瞬間、明里が呟いた。


「けど、うらやましい」


「えー?」


振り向いたあたしに、明里はハッとして首を振った。


「何でもねーよ」


待てーい、結衣、と明里があたしを追い越して行った。


なんとも言えない気持ちが、あたしを支配していた。


あれは、あたしの見間違いだったのかもしれないけど。


でも……。


振り向いた時、一瞬だけ、明里が泣きそうな顔をしていたような気がした。


「待てーい! 赤毛のアーン!」


「るっせー! この荒れ地の魔女め!」


じゃれついて掛けて行くふたりを見つめながら、あたしは立ち止まった。


なんか……みんな切ない顔ばかりするのは、季節が季節だからなのか。


秋だから、なのか。


川の水面に夕日が乱反射して、きめ細やかに輝いていた。












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